邦題「クレド/エレーヌ・グリモー」と題されたこのCDの5曲目は、ベートーヴェン作曲の”ピアノ、合唱と管弦楽のための幻想曲 ハ短調 作品80(合唱幻想曲)”です。この曲を聴いた時の興奮は今でも忘れることはできません。何故ならザ・ビートルズの中で私の最も好きなアルバム、通称”ホワイトアルバム”に収録されている”レボリューション9”にこの”合唱幻想曲”の一部分が使われていたからです。サウンド的にはかなり”いじって”いますけれども、ホワイトアルバムのライナーによるとジョン・レノン曰く”ある程度ヨーコの影響を受けた作品”とのこと。革命(レボリューション)をサウンドで表現したサウンド・コラージュで、現代音楽に通じるものがあります。他にもクラシックが登場する箇所がありますが、未だにわかりません。私が高校2年の頃に”ホワイト・アルバム”は発売されていますから大体50年前の話です。当時友達から借りたこのアルバムを夜寝る前に布団に入って”レボリューション9”を聴き、最後の曲リンゴ・スターがボーカルの”グッド・ナイト”を聴いて寝るのが大好きでした。当時はCDなんてありませんからLPレコードをモジュラーステレオで聴いていました。
さて、この「エレーヌ・グリモー/クレド」ですが、1曲目はジョン・ココリアーノという作曲家の、ソロ・ピアノのための”ファンタジア・オン・オスティナート”という曲から始まります。なかなか前衛的な曲で、ピアニスト、エレーヌ・グリモーの研ぎすまされた感性が光ります。2曲目から4曲目はベートーヴェン”ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31の2(テンペスト)です。まあ、正統的なベートーヴェンのピアノ・ソナタといえるでしょう。5曲目、6曲目が”ピアノ、合唱と管弦楽のための幻想曲・・・”。7曲目はアルヴォ・ベルト作曲”ピアノ、混成合唱と管弦楽のための『クレド』”で、古典的な曲の始まりと思いきや完全な現代的宗教音楽になっています。そして、最後の8曲目はJ・C・バッハ”平均律クラヴィーア曲集 第1巻から 第1番 プレリュード”で終わります。全体を大きな時間軸として捉えたこのCDは久しぶりに聴きましたが、エレーヌ・グリモーさんというピアニストはただピアノが技巧的に素晴らしい方だけでなく各楽曲を哲学的なアプローチで迫っていると私は感じます。ドイツグラムフォンから発売されたこのCDは2003年ストックホルムで録音されています。指揮はエサ=ペッカ・サロネン、スウェーデン放送交響楽団です。CD番号はUCCG-1184になります。