出谷 啓氏著「クラシック CDで聴く名曲・名盤」には、常々お世話になっております。私はこの著作で、現在所有しているクラシック音楽のCD盤以外にも、指揮者違いの盤やレーベルの違いによって随分曲の印象がちがうのだなということが確認できた点で大変参考になった著作です。本当に感謝しております。まあ今はネットの時代ですのでウィキペディアも当然参考にしていますが。
さて、ベラ・バルトーク作曲の管弦楽曲の中で一番世に知れ渡った楽曲といえば「管弦楽のための協奏曲」だと思います。英語表記では「CONCERTO FOR ORCHESTRA」で、クラシック音楽愛好家の間では、通称 ” オケコン ” と呼ばれています。前述の出谷 啓氏の著作からの引用を以下勝手にさせていただきますと、” この曲はボストン交響楽団の委嘱で、アメリカ亡命中の晩年に書かれた傑作である。”とのこと。バルトークはアメリカ合衆国に亡命されていたのですね。そして、この協奏曲について出谷氏の説明が続きます。” 曲は晩年の不遇な時代に書かれたが、音楽そのものは、もはや思考や探求や自足さえも超越して、平易な楽想で聴き手を楽しませるものになりきっているところに注目すべきだろう。” そして、こうも書いておられます。” 人の心に直接触れる暖かさと、意外なほどの華麗さと甘美ささえ加わっている平明でわかりやすく、かつ、晩年の巨匠の円熟した技法が、最上の形で発揮された傑作である”と。まさにこの楽曲の本質を的確に語っておられます。
フリッツ・ライナー指揮/シカゴ交響楽団の演奏は何度聴いても素晴らしいの一言です。何回聴いても飽きのこない演奏というのはこうゆう演奏なのだなあとつくづく思います。そして、出谷 啓氏のコメントのしめくくりは ” 完璧を極めたシカゴ交響楽団のアンサンブルと、各ソロイストの腕は超怒級で、歴史的名盤の尊称にふさわしい演奏である ” と。全体を通して特徴的なメロディはないにも拘らず、なにか聴く人を安心させるようなメロディもあったり、タイトル通り各楽器の特徴を魅力的に散りばめられている構成なので聴く人を飽きさせないのでしょうか。そしてなにより現代音楽のような難解さはありません。私は現代音楽を否定はしませんが、長く聴くには私の感性では10分聴き続けるのはかなりキツイのです。
私がこのCD盤を購入したきっかけは、ズバリ!ジャケットデザインの素晴らしさです。分厚い厚紙を使った紙ジャケが大いに気に入ったのもありますが、バルトークの欧文の書体にはシビレました。楽曲自体は別の指揮者で数枚CD盤は所有しておりましたので、楽曲自体は知っていましたが、このCD盤の音質はなかなか素晴らしい。低域も充実しており、何といっても演奏が素晴らしいいのです。レコーディングは1955年ですからかなり古い録音になりますが、ビクターK2(A/Dコンバーター)プロセッシング処理されたもので、私にとっても難しい話になるのでこのくらいにしておきますが、要はデジタル技術によって大変音の良いCD(xrcd2)になっているということです。こんな素人の説明で申し訳ありません。
指揮者フリッツ・ライナー氏は作曲家ベラ・バルトークと同じハンガリー出身です。ウィキペディアで調べてみてください。略歴等詳しく載っております。このCD盤についてですが、演奏はシカゴ交響楽団、レーベルは日本ビクター、CD番号はJMCXR-0007です。他の指揮者、交響楽団によるCD盤もご紹介しておきます。スイス人指揮者シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団もお洒落なサウンドで、前述の出谷氏のコメントには ” 実に洗練された都会的でエレガントなバルトークは、そんじょそこらにあるものではない。” と仰っております。確かに上品な演奏です。レーベルはLONDON/DECCA、CD番号はPOCL-5174です。そして、これからの時代のクラシック界を担うといわれている英国の指揮者サイモン・ラトル指揮/バーミンガム市交響楽団による演奏も録音も良くお薦めです。レーベルは東芝EMI(EMI CLASSICS)、CD番号はTOCE-55500で、バルトークのバレエ音楽 ” 中国の不思議な役人” も収録されています。さらに、フランス人指揮者・作曲家ピエール・ブーレーズ盤のオケコンについては、オーディオ的に大変録音もよくお薦めですが、私の好みの音ではありません。ライナー盤と同じシカゴ交響楽団というのも興味深いです。まあ、後は好みということで。レーベルはドイツ・グラムフォン、CD番号はPOCG-1720になります。尚、出谷氏お薦めのゲオルク・ショルティ盤は所有しておりません。この盤も演奏はシカゴ交響楽団みたいです。