シャルル・ミュンシュ指揮/ブラームス「交響曲 第1番 ハ短調 作品68」について

宇野功芳氏によるライナーの中の文章がこのCD盤を見事に言い表わされているので、毎度のことながら勝手に抜粋させていただきます。以下ご紹介させていただきます。

”全曲の基本となる遅いテンポ、堂々たる威容とスケールの大きさ、激しい情熱と寂しい物思い、そして感情の動きに従って流動するテンポ、最もデリケートなピアニッシモから、恐ろしいほどのフォルテッシモの爆発にいたるダイナミックスの振幅、粘り気味のリズムと心からの歌、メカニックな冷たさを極力排したアンサンブル、まさにドイツならではの精神の響きであり、人間の音楽である。”(仰る通りだと思います)

指揮者シャルル・ミュンシュ氏は1891年、フランス、ストラスブールで生まれたドイツ系のフランス人で、1938年から46年までパリ音楽院管弦楽団(パリ管弦楽団の前身のオーケストラ)常任指揮者をつとめ、1949年から1962年に引退するまで米国、ボストン交響楽団の常任指揮者として活躍された方のようです。その後引退されたようですが、1967年にパリ管弦楽団の音楽監督に就任、高齢にも拘らずの職務が祟り、1968年11月に急逝されました。

ドイツ系フランス人という出自がブラームスの交響曲に対するシンパシーがあったのかもしれません。しかしながら、宇野功芳氏はこのブラームス「交響曲 第1番」についてこうも仰っております。ブラームスにはフルトヴェングラーの名演も残されているが、僕はミュンシュを採りたい。それはフルトヴェングラー以上にフルトヴェングラー的な演奏であり、とてもフランスの指揮者、フランスのオーケストラとは思えない、と。余程ミュンシュ盤に惚れ込まれているのでしょう。私はこのブラームス「交響曲 第1番」はレナード・バーンスタイン盤を持っていて昔はそこそこ聴いておりましたが、今はミュンシュ盤を聴いている毎日であります。なんというか冒頭の序奏部のちょっと遅めのテンポ、重厚なティンパニ、パリ管弦楽団員のヴァイオリンの独特の響き等に較べるとバーンスタイン指揮のウィーンフィルは特徴のない普通の音(偉そうですみません)に聴こえてしまいます。

さて、宇野功芳氏はクラシック音楽の評論家であり、指揮者でもある方ですが2016年にお亡くなりになりました。話は変わりますが、クリスチアン・ツィメルマン(ピアノ&指揮)、ポーランド祝祭管弦楽団のショパン「ピアノ協奏曲 第1番、2番」のライナーに宇野氏のコメントが載っています。ショパンのピアノ協奏曲のオーケストレーションは” 稚拙である ” というのが定説だったのですが、ツィメルマン/ポーランド祝祭の演奏についてはショパンのオーケストレーションを非常に高く評価されていて、私はこの宇野氏の感性に非常にシンパシーを感じています。実際にこのCD盤を聴けば納得の評価であると思います。過去このブログでご紹介した経緯があります。

なお、指揮者フルトヴェングラー氏は1886年、ドイツ・ベルリン生まれ。ヒトラー率いるナチスのプロパガンダに利用され、戦後約2年間の演奏活動停止されました。バイロイト音楽祭のベートーヴェン「第9」のライヴ録音のCD盤は所有しておりますが、音質が悪いのとモノラル録音ということでほとんど聴くことはありません。歴史的な演奏だとは思いますが・・・。

シャルル・ミュンシュ盤のレーベルはEMI Classics、CD番号はTOCE 90044です。録音は1968年1月なのでかなり前なのですが、ART(アビーロード・テクノロジー)シリーズなので音質的にはなかなか綺麗なものです。発売当時、仏ADFディスク大賞を受賞しており、日本でもレコード芸術推薦との表記があります。