アメリカ合衆国のオーケストラの雄 ”クリーブランド管弦楽団 ”について

芸術文化研究者で音楽評論家でもあり、大学の非常勤講師もされていて「オーケストラ大国アメリカ」(集英社新書)の著書である山田真一氏のこの著作は、掛け値なしの名著ではないかと個人的には思っております。クラシック音楽はそれほど詳しくないけど、有名どころのベートーヴェンとかモーツァルトは好き・・そんな方にもお薦めできる内容です。アメリカ合衆国のオーケストラの発祥から1970年代に至るまでの歴史だけではなく、オーケストラの楽団員に強権的?に指揮を執る、あるいは過酷な練習を科す名指揮者達とオーケストラの関係など内容的にてんこもり状態で、私にはなくてはならない新書本なのです。

いきなり、” おわりに ” のページの文章から抜粋してしまいますが、今回のブログに「アメリカ合衆国のオーケストラの雄 ” クリーブランド管弦楽団 ” について」というタイトルを付けた理由を皆様にご理解いただきたいと。ちょっと説明したいのでお付き合いください。

おわりに

クリーブランド管弦楽団やシカゴ交響楽団を現地で聴く衝撃は大きい。ディスク録音は後から修正するので、ディスクでよいと思ったアーティストでもライブは期待外れということがよくある。しかし、録音がよい上に、ディスクでは想像できないほどライブが優れているというのが、これらのオーケストラだ。また、彼らのスタジオ・セッションにアテンドした時には別の意味で驚いた。それは基本的に一発録りで、ライブと変わらないものだったからだ。聴衆ゼロのライブ録音。それが世界のトップレヴェルのヴィルトーゾ・オーケストラなのだと知ることになった。(ヴィルトーゾの意味は簡単にいうと ”巨匠 ”、 ” 名人” という意味で、極めて卓越した技術をしなえた名人演奏家、この場合は演奏家集団ということですかね。AERA Mook/音楽がわかる。より)

上記の ” おわりに ”  の文章はこの著作の中で山田氏が一番言いたいことではないかと思っています。聴衆に衝撃を与える演奏というのは、練習、練習、とにかく練習しかないのでしょうね。そのことを徹底的に団員に叩き込んだのは今は亡き偉大な指揮者であるジョージ・セル氏だったのです。時代的には1960年あたりだと思います。今回お話するCD盤は、ジョージ・セル指揮ではありませんが、フランス人であるピエール・ブーレーズ指揮、クリーブランド管弦楽団演奏、1998年にアメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドのマソニック・オーデュトリウムにて録音されたストラヴィンスキー作曲「春の祭典/ペトリューシュカ」で当時のオーディオ雑誌等で盛んに取り上げられ、実際に所有されておられる方も多いCD盤だと思います。顕微鏡で覗くような精緻なブーレーズ氏の曲に対する解釈と、ジョージ・セル氏によって鍛え上げられた楽団員の方々のハイレベルな演奏の技量を引き継いだ今の楽団員の皆さんあってこそなの名盤だと思います。

私はクラシックコンサートで直にオーケストラが奏でる音を体験したことは数回ありますが、クリーブランド管弦楽団とかシカゴ交響楽団のコンサートを直に触れたことは残念ながらありません。死ぬまでには生で体験したいとは思っておりますが。次回はこの偉大な指揮者ジョージ・セル氏がロンドン交響楽団を客演されたヘンデル作曲「水上の音楽」についてお話したいと思います。