ベラ・バルトーク作曲「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」も是非聴いてみてください。

前回のブログでご紹介したバルトーク作曲/フリッツ・ライナー指揮・シカゴ交響楽団による「管弦楽のための協奏曲」(以下、オケコン)は1955年に録音されました。その3年後、1958年12月に録音されたのが「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」(以下、弦チェレ)です。演奏は同じシカゴ交響楽団、指揮はもちろんフリッツ・ライナー氏であります。このCD盤のライナーノーツに執筆されている、音楽評論家である諸石幸生氏のコメントの一部です。

” 冒頭の弦楽器によるうねるようなアンサンブルから熱く熱されたサウンドが充満してくる、極めて集中度の高い劇的演奏である。時にガラス細工のように再現されることもある作品だが、ライナーの手にかかると、緊迫感はあっても決して線が細くならず、また表現が病的になることもない。骨が太く逞しい演奏である。そして、全曲には一貫して作曲家と作品を知り尽くしたライナーにして初めて可能な安定感と生命力があふれ出ており、微動だにしない確信に満ちた演奏が輝かしい。リズムの明晰さも特筆されるが、それは若き日に打楽器奏者として活躍したこともあるライナーを偲ばせるし、オーケストラの充実した響きと演奏の巧さにも感心させられる。”

さすがに評論家の文章ですよね、この楽曲の本質を捉えられていると思います。がしかし、最初にこの曲を聴いた時の私の感想はというと、”なんて暗い音楽なの? ” です。諸石氏による” 冒頭の弦楽器のうねるようなアンサンブル・・” のところなど、暗い部屋でひとりで聴くと本当に暗い気分になります。まあ、暗い部分が終わりまで続くことはありませんし、聴き続けるうちに気にはならなくなりましたが。この ” 弦チェレ ” は ” オケコン ” の影に隠れている印象(私は勝手にそう思っております)ですが、最近は ” 弦チェレ ” の方を聴く機会が増えている気がします。なぜかはわかりません。しかしながら何回も聴いていると ”オケコン ” でも感じますが、当時のシカゴ交響楽団の楽員の演奏の技術力の高さが窺えます。楽章が進むとともに民族色(ハンガリー色)が濃密となり、終楽章で頂点に達するという構成になります。尚、このCD盤には「5つのハンガリー・スケッチ」という曲目も収められていて、ライナーノーツでの諸石氏のコメントの一部を抜粋すると、” 聴く者をハンガリーへの郷愁にかきたてるこの小品は、バルトークがもともとはピアノのために書いていた小品を管弦楽用にアレンジしたものである” とのことですが、私はハンガリーには行ったこともなければ住んだこともありません。しかしながら、言われてみればハンガリーイメージを想起させるメロディなのかなと思います。ハンガリーの大作曲家コダーイ的なものを確かに感じます。

このCD盤のレーベルは ” オケコン ” と同じ日本ビクターで、ビクターK2デジタルプロセッシング処理(xrcd2盤)されたものですので、音質は大変良好です。CD番号はJMCXR-0012、ジャケットの絵画(ハンガリーをイメージ?)も素晴らしいものです。また、フランス人指揮者ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団のCDも聴き応えがあります。ライナー盤と同じシカゴ交響楽団ですが、こちらは1994年のデジタル録音なので音の良さが光っています。現代的な音を期待したい方はむしろブーレーズ盤がお薦めです。また、この盤には「中国の不思議な役人」が収められているのでそちらも素晴らしい。この楽曲は前回のオケコンで紹介したサイモン・ラトル指揮/バーミンガム市交響楽団盤にも収められているのでそちらと聴き比べするのもいいと思います。レーベルはドイツ・グラムフォン、CD番号はPOCG-1942になります。